高齢期におけるトラブル

この記事を書いた人
弁護士町田北斗

中央大学法科大学院を卒業後、不動産や通信関連企業での勤務を経て、2018年に弁護士登録(東京弁護士会所属)。
離婚、相続、労働紛争、企業法務、事業承継、債権回収などを取り扱う。
ONGマネジメント合同会社を設立し、特に中小企業の事業再生支援や経営コンサルティングに注力しています。

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高齢期に直面しやすい法的トラブル概要:リスクと対策

高齢期は、身体的・精神的な変化に伴い、それまで見過ごされていた様々な法的トラブルが顕在化しやすい時期です。特に、本人の判断能力の低下と財産の管理を巡る問題は、家族間の深刻な紛争の主な原因となります。

1. 財産管理と相続対策のトラブル

高齢期に最も問題となるのが財産の管理と承継です。

認知症による財産凍結
本人の判断能力が低下すると、銀行口座からの高額な引き出しや不動産の売却、賃貸契約などができなくなり、財産が凍結された状態になります。これにより、医療費や介護費の支払いが滞るリスクが生じます。

財産の使い込み
判断能力が不十分な親族に財産管理を任せた結果、他の相続人によって預貯金が不正に引き出される(使い込み)トラブルが発生し、相続開始後に大きな紛争となります。

遺言書の不備
遺言書を作成していても、本人が認知症を発症した後に作成されたとして、その**「有効性」**を巡り相続人間で争われるケースが多発します。

▶▶カテゴリ:相続

2. 家族関係・介護を巡る紛争

負担の偏りによる紛争
特定の子ども(例:長男の嫁)が献身的に介護を続けたにもかかわらず、他の相続人が介護の貢献を認めず、**「寄与分(きよぶん)」**の主張を巡って紛争化します。感情的な不満が法的請求に発展しやすい事例です。

成年後見制度を巡る対立
財産管理のために家庭裁判所に成年後見人を選任する際、子どもの間で「誰が後見人になるか」あるいは「後見制度を利用すべきか」を巡って対立が生じることがあります。

3. 医療・介護と尊厳を巡る問題

終末期医療の意思決定
本人が自らの意思を表明できなくなった場合、延命治療の中止や開始について、家族間で意見が対立することがあります。これには、本人が元気なうちに**「リビングウィル(事前指示書)」**を作成し、自分の意思を明確にしておくことが法的・倫理的に重要です。

悪質な契約トラブル
判断能力が低下した高齢者を狙った訪問販売詐欺的商法(不要なリフォーム契約など)に巻き込まれる消費者トラブルも増加します。家族が事態に気づいた場合、消費者契約法民法に基づき契約の取り消しを求める必要があります。

これらのトラブルから高齢者自身と家族の未来を守るためには、元気なうちの遺言書・家族信託の活用や、任意後見契約の締結など、予防的な法的措置が最も効果的です。

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