【弁護士解説】本人訴訟における「証人尋問・本人尋問」の攻略法と絶対避けるべきNG行動

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弁護士町田北斗

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【弁護士解説】本人訴訟における「証人尋問・本人尋問」の攻略法と絶対避けるべきNG行動。左側に「攻略法」として冷静で準備万端な様子、右側に「絶対避けるべきNG行動」として感情的で準備不足な様子を対比させたイラスト。 本人訴訟
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民事裁判において、書面のやり取りが一段落すると行われるのが**「証人尋問(しょうにんじんもん)」および「本人尋問(ほんにんじんもん)」**です。

実務では、尋問手続きで勝敗の帰趨が大きく変わるということはありません。
争点整理において提出された物的証拠や争いのない事実を基礎にして、裁判所は、すでにある程度の心証を確立しています。
実務の現場では、尋問手続きは、あくまでも補充的な意味合いという要素が強いように思います。

今回は、本人訴訟で尋問に臨む際に知っておくべき基本構造と、失敗しないための具体的な注意点を解説します。

裁判官なら分かってくれるという願望は幻想です。
裁判官も普通の人と同じ人間のため、嘘を見破ることはできません。
過度な期待はすべきではありません。それよりも自分に有利な証拠を数多く提出することが重要です。


1. 尋問とは何か?その目的を理解する

まず、なぜ尋問を行うのかを理解しましょう。 裁判官は、それまでに提出された「陳述書」や「証拠書類」をすでに読んでいます。その上で、さらに法廷で話を聞く目的は主に2つです。

  1. 信用性の確認: 書面に書いてあることが本当かどうか、話している人の言動に矛盾がないかを見て判断するため。
  2. 争点の深掘り: 書面だけでは不明確な点や、相手方の主張と食い違っている部分を明らかにするため。

用語の整理

  • 証人尋問: 第三者(目撃者、関係者など)への質問。
  • 本人尋問: 原告・被告自身(当事者)への質問。

2. 尋問の基本的な流れ

尋問は通常、以下の順番で行われます。この流れを体に染み込ませておくことが重要です。

① 主尋問(しゅじんもん)30~60分程度

申請した側(味方)が行う質問です。

  • 目的: 自分の主張に沿ったストーリーを、裁判官にわかりやすく伝えること。
  • 本人訴訟の場合: 自分が当事者の場合は、裁判官に話す形(陳述)になることもありますが、自分自身で語るスタイルをとります。

② 反対尋問(はんたいじんもん)

相手方(敵)が行う質問です。

  • 目的: 主尋問での証言の矛盾を突いたり、信用性を落としたりすること。
  • 注意点: ここが最も厳しい時間です。相手(弁護士である可能性が高い)は、あなたの主張の信用性を崩そうと準備してきています。

③ 再主尋問(さいしゅじんもん)

反対尋問で崩されたり、誤解されたりした点を修正するための補足質問です。


3. 準備編:勝負の9割は「準備」で決まる

法廷でのアドリブは禁物です。プロの弁護士でも、徹底的な準備なしに尋問は行いません。

陳述書との整合性

尋問は、事前に提出した「陳述書」に基づいて行われます。陳述書の内容と、法廷での証言が食い違うと「この人は嘘をついているかもしれない」と裁判官に疑われます。自分の陳述書を何度も読み返し、暗記するレベルまで頭に入れておきましょう。

シミュレーション(リハーサル)

可能であれば、友人や家族を相手に練習してください。

  • 質問に対して「一言で」答える練習。
  • 意地悪な質問をされた時に、カッとならずに答える練習。

4. 実践編:尋問当日に気をつけるべき「3つの鉄則」

本人訴訟の方が最も失敗しやすいポイントをまとめました。

鉄則① 聞かれたことだけに答える(演説をしない)

これが最大のルールです。 質問者は「はい」か「いいえ」、あるいは具体的な事実(日時、場所、誰が等)を聞いています。

  • 悪い例:
    • 質問:「あなたは契約書にサインしましたか?」
    • 回答:「サインはしましたが、それは彼が無理やり私に迫ってきて、断れない状況だったので仕方なく…(長々と事情を話す)」
    • 解説: これは裁判官の心証を悪くします。「言い訳が多い」と捉えられます。
  • 良い例:
    • 回答:「はい、しました。」(事情は次の質問や、主尋問で説明する)

鉄則② わからないことは「わかりません」と言う

記憶が曖昧なことを無理に答えたり、推測で話したりするのは危険です。反対尋問でそこを突かれると、証言全体の信用性が崩壊します。

  • 「覚えていません」
  • 「今の質問の意味がわかりません」 とはっきり言うことは、恥ずかしいことではありません。

鉄則③ 感情的にならない(挑発に乗らない)

相手方の弁護士は、反対尋問であなたを怒らせようとするかもしれません。怒ると人は余計なことを口走ったり、論理が破綻したりするからです。

  • どんなに不愉快な質問をされても、一呼吸置いて、冷静に、裁判官の方を向いて答えてください。
  • 喧嘩をする場所ではなく、「事実」を淡々と述べる場所です。

5. 相手への質問(反対尋問)を行う際のコツ

反対尋問は、弁護士であっても非常に難しいです。有利な反対尋問ができるという確証がなければ、反対尋問を行わないことも選択肢となります。

答えが分からない質問は行うべきではありません。
相手の主張にとって、有利な証言をさせてしまう可能性があるためです。

あなたが相手方(または相手方の証人)に質問をする番になった時には、次の点に注意しましょう。

①議論をふっかけない

本人訴訟でよくあるのが、質問ではなく「議論」をしてしまうケースです。

  • NG: 「あなたは〇〇と言いますが、それはおかしいじゃないですか!私はこう思うんですよ!」
  • OK: 「あなたは〇〇と言いましたが、契約書の第3条には何と書いてありますか?」

尋問は**「相手から証言を引き出す」**ためのものであり、あなたの意見をぶつける場ではありません。意見は最終準備書面で書けば良いのです。

②「はい・いいえ」で答えさせる質問(誘導尋問)を活用する

反対尋問では、答えを限定する質問が許されています。 相手に自由に喋らせると、言い訳を許してしまいます。「~という事実はありますね?」と畳み掛けるのがセオリーです。

③矛盾する証拠を提示する。

反対尋問のゴールの一つは、相手の供述の信用性を弾劾(だんがい)すること、つまり「その証言は信用に値しない」と示すことです。

そのために最も破壊力があるのが、**「供述と矛盾する客観的証拠」**の提示です。 どれだけ相手が法廷で流暢に自己正当化をしていても、過去に自分が作成したメールや契約書、録音データといった「客観的事実」と矛盾していれば、その言い分は一瞬にして崩れ去ります。

具体的には、以下のプロセスが決まった瞬間、それは弁護士として**「100点満点の反対尋問」**と言えるでしょう。

【理想的な展開】 相手に自信満々に嘘をつかせた後で、それとは真逆の内容が記されたメール等の証拠を突きつけ、「矛盾している事実」を認めさせる。

これが成功すれば、その特定の事実だけでなく、「この証人は平気で嘘をつく(あるいは記憶が極めて曖昧である)」という印象を裁判官に強く植え付けることができ、証言全体の信用性を失わせることができるからです。

実践! 証拠を突きつける「タイミング」が命

では、単に証拠を出せば良いのかというと、そうではありません。ここには高度な技術が必要です。 重要なのは、**「逃げ道を塞いでから、証拠を突きつける」**という手順です。

いきなり証拠を見せてしまっては、「あ、それは書き間違いです」「その時はそういうつもりでしたが、その後変更になりました」と弁解の余地を与えてしまいます。

実務では、次のような手順を踏みます。

手順①:供述を「固める」(囲い込み)

まず、証拠を見せずに相手に質問し、嘘の供述を明確にさせます。「絶対に間違いありませんね?」と念押しし、後で「勘違いでした」と言わせないように外堀を埋めます。

手順②:証拠の「突きつけ」

相手が言い逃れできないほど供述を固定したタイミングで、矛盾する証拠(メール等)を提示します。

手順③:矛盾の「確認」

「先ほどの証言と、このメールの内容は矛盾していますね?」と追及し、相手にぐうの音も出ない状況を作ります。

具体例:貸金返還請求訴訟のワンシーン

分かりやすく、お金の貸し借りのケース(「貸した」vs「もらった」)で見てみましょう。

  • 争点: 原告が振り込んだ100万円は「貸付金」か「贈与」か。
  • 被告(相手方)の主張: 「あれは、あなたが『あげる』と言ってくれたものだ。返す約束はしていない」
  • 決定的証拠: 被告が原告に送った「来月必ず返します」というメール。
【悪い尋問例】✘

いきなりメールを見せてしまう。

  • 弁護士: 「このメールを見てください。『返します』と書いてありますよね? だから貸付ですよね?」
  • 被告: 「あ、そのメールは、とりあえず一旦そう書いておいただけです。その後、電話で『やっぱりあげるよ』と言われました。」
  • 解説: これでは、新たな言い訳(電話での合意)を作られてしまいます。
【100点満点の尋問例】◎

まずはメールを隠して、被告の「贈与だった」という主張を限界まで引き出します。

  • 反対尋問者: 「あなたは、原告から100万円を受け取った際、『あげる』と言われたのですね?」
  • 被告: 「はい、そうです。」
  • 反対尋問者: 「返す約束は一切していない、ということですね?」
  • 被告: 「はい、していません。」
  • 反対尋問者: 「その後、あなたの方から『返す』と申し出たこともないですね?」
  • 被告: 「ありません。もらったものですから。」
  • 反対尋問者: 「その点について、記憶違いの可能性はありますか?」
  • 被告: 「いいえ、絶対にありません。」(※ここで供述が完全に固定されました)
  • 反対尋問者: (証拠提示)「では、甲第◯号証、あなたが原告に送ったメールを示します。読み上げてください。」
  • 被告: 「……『来月末には、必ず100万円をお返しします』……」
  • 反対尋問者: 「先ほどの『返すと言ったことはない』という証言と、明らかに矛盾していますね?」
  • 被告: 「…………。」

この沈黙、あるいはしどろもどろになる姿こそが、裁判官に対して**「勝負あり」**を告げる瞬間です。


6. まとめ:無理だと思ったら専門家の支援を

尋問は、独特のルールと空気感の中で行われる高度な手続きです。 本人訴訟で進めてきたものの、「尋問手続だけはどうしても不安だ」「尋問事項(質問書)の作り方がわからない」という場合は、この段階だけでも弁護士に相談することをお勧めします。

尋問での失敗は、取り返しがつかないことが多いからです。 十分な準備と冷静な心を持って、当日に臨んでください。

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当事務所では、本人訴訟のサポートや、尋問対策のみの法律相談も承っております。「尋問のリハーサルをしてほしい」といったご要望にも対応可能です。不安な方は、期日が迫る前に一度ご相談ください。

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