【弁護士が解説】自分で行う!ネット誹謗中傷・風評被害への法的対応─削除依頼から発信者特定まで

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弁護士町田北斗

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2018年 弁護士登録(東京弁護士会)

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ネット上の誹謗中傷や風評被害に苦しむ依頼者と、削除依頼や発信者特定などの法的対応を進め解決に導く弁護士のイラスト。記事タイトル:「【弁護士が解説】ネット誹謗中傷・風評被害への法的対応─削除依頼から発信者特定まで」 スモールビジネス
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「Googleマップに事実無根の口コミを書かれた」
「匿名掲示板で実名を晒され、あることないこと書かれている」
「SNSでの炎上で、会社の採用活動や売上に影響が出ている」

インターネット上の誹謗中傷や風評被害は、放置すれば拡散され続け、企業のブランド毀損や個人の社会的評価の低下を招きます(デジタルタトゥー)。 しかし、これらは決して「泣き寝入り」すべき問題ではありません。法的な手続きを踏むことで、記事の削除や加害者の特定が可能です。

弁護士費用が20~30万円以上かかることが多いため、資金に余裕がない方は、泣き寝入りすることになります。
しかし、本ページでは、泣き寝入りせずに、ご自身で出来るように分かり易く紹介したいと思います。

本記事では、ネット誹謗中傷に直面した際の実務的な対抗策と法的フローについて解説します。


1. 誹謗中傷が「違法」となるライン

書き込みの内容が「気に入らない」というだけでは、削除や損害賠償請求はできません。法的に権利侵害と認められる必要があります。主な侵害類型は以下の通りです。

① 名誉毀損(めいよきそん)

「公然と」「事実を摘示し」「人の社会的評価を低下させる」行為です。

  • 例: 「A社は残業代を払っていないブラック企業だ」「B氏は不倫をしている」など、具体的な事柄を挙げて批判する場合。
  • ※注意: たとえ真実であっても、公益性がなければ名誉毀損になり得ます。

② 侮辱(ぶじょく)

事実を摘示せず、相手の人格を否定する罵詈雑言を浴びせる行為です。

  • 例: 「バカ」「無能」「詐欺師」といった抽象的な悪口。

③ 信用毀損・業務妨害

虚偽の情報を流し、経済的な信用を落としたり、業務を妨害したりする行為です。

  • 例: 「あの店の料理に異物が入っていた(嘘)」などの書き込み。

④ プライバシー侵害・肖像権侵害

住所、電話番号、私生活の写真を無断で公開する行為です。


2. 被害に遭った時の初動対応:証拠保全

最初に行うべきは**「証拠の保存」**です。 相手が投稿を削除したり、アカウントを消したりすると、追跡が困難になります。

【有効な証拠の残し方】 スマホやPCのスクリーンショットを撮ります。その際、必ず以下の情報が含まれていることを確認してください。(スマホで画面を撮影する方法でも問題ありません。)

  • 投稿内容全体
  • 投稿された日時
  • 投稿のURL(ウェブサイトのアドレス)
  • コンテキスト(前後の文脈)

※URLが切れていると証拠として弱くなるため、PDF保存機能なども併用することをお勧めします。(PCの場合、該当ページを右クリックして、「印刷」→送信先をPDFにする)


3. ステップ①:記事・投稿の「削除」

ネガティブな情報をインターネット上から消すための手続きです。

サイト運営者への削除依頼

各サイト(Google、X、掲示板管理者など)には「削除申請フォーム」や「違反報告機能」があります。 しかし、任意の削除依頼は「表現の自由」を理由に応じてもらえないケースも多々あります。

裁判所を通じた「削除を求める仮処分(かりしょぶん)」

サイト側が削除に応じない場合、裁判所に**「削除仮処分命令」**を申し立てます。 通常の裁判(訴訟)よりも迅速に決定が出る手続きで、裁判所から削除命令が出れば、ほとんどのサイト管理者は削除に応じます。

. 削除仮処分命令とは何か?

削除仮処分命令とは、裁判所を通じて、ウェブサイトの管理者やプロバイダに対し、「記事や投稿を仮に削除しなさい」と命じてもらう手続きのことです(民事保全法に基づく手続き)。

なぜ「仮」なのか?

通常の裁判(本訴)で「違法だから削除せよ」という確定判決を得るには、半年から1年以上の時間がかかることが珍しくありません。しかし、ネット上の情報は瞬く間に拡散するため、判決を待っていては被害者の社会的信用やプライバシーが守れない場合があります。

そこで、本裁判の結論が出る前に、**「とりあえず急いで削除する状態を作り出す」**ために行われるのがこの手続きです。

ポイント 「仮」という名称ですが、実務上は、裁判所から削除命令が出れば、ほとんどのサイト管理者は削除に応じます。したがって、仮処分が認められれば、実質的な解決(削除)に至るケースが大半です。


2. 削除仮処分が認められるための2つの要件

裁判所に削除仮処分命令を出してもらうためには、法律上、以下の2つの要件を疎明(証明)する必要があります。

① 被保全権利(守るべき権利があること)

「その投稿によって、私の権利が侵害されている」という事実です。 具体的には以下のような権利侵害が主張されます。

  • 名誉毀損(名誉権侵害): 公然と事実を摘示し、社会的評価を低下させる場合
  • プライバシー侵害: 私生活上の事実を勝手に公開された場合
  • 肖像権侵害: 顔写真などを無断で掲載された場合
② 保全の必要性(急ぐ理由があること)

「今すぐ削除しなければ、回復困難な損害が生じる」という事情です。 インターネット上の情報はコピーや拡散が容易であるため、基本的には「ネット上に掲載されている」という事実をもって、保全の必要性が認められる傾向にあります。


3. 手続きの流れと期間

通常の裁判よりも迅速に進むのが特徴です。スムーズに進めば、申立てから1ヶ月〜2ヶ月程度で削除が実現します。

Step 1:仮処分の申立て

債権者(被害者)が、債務者(サイト管理者・プロバイダ)を相手取り、裁判所に申立書と証拠を提出します。

Step 2:審尋(しんじん)

裁判官と、双方の当事者(または代理人弁護士)が面談を行う手続きです。通常の法廷ではなく、ラウンドテーブルのような部屋で行われることが一般的です。

  • 双方審尋: 相手方の言い分も聞く手続き(原則)。
  • ここで、「権利侵害があるか」「削除すべきか」の法的な議論が行われます。
Step 3:担保金の納付(供託)

裁判官が「削除を認める(心証形成)」となった場合、命令発令の条件として**「担保金」**の納付を求められます。

  • これは、万が一後で「削除は間違いだった(違法ではなかった)」と判明した場合に、相手方に生じる損害を賠償するための保証金です。
  • 相場: 30万円〜50万円程度が一般的です。
  • ※このお金は、手続き終了後に所定の手続きを踏めば返還されます。
Step 4:削除仮処分命令の発令

担保金の入金が確認されると、裁判所から正式に命令が出されます。

Step 5:削除の実行

決定正本を相手方に送達すると、相手方が削除を実行します。 (従わない場合は「間接強制」という手続きに進みますが、多くの事業者は命令に従います)

削除仮処分命令のメリット・デメリット

メリットデメリット
〇スピードが早い
通常の裁判より圧倒的に早く、拡散を食い止めることができます。
×担保金が必要
一時的とはいえ、数十万円単位のまとまった現金を用意する必要があります。
〇実効性が高い
裁判所の命令であるため、海外サーバーの管理者なども従うケースが多いです。
×高度な法的知識が必要
短期間で裁判官を説得する必要があるため、主張や証拠の整理に高い専門性が求められます。

4. ステップ②:投稿者の「特定」と「責任追及」

「削除するだけでは気が済まない」「損害賠償を請求したい」「二度とやらないと誓約させたい」という場合は、匿名投稿者を特定する必要があります。

これを**「発信者情報開示請求」**といいます。

特定までの流れ(改正プロバイダ責任制限法)

かつては2回の裁判が必要でしたが、2022年の法改正により、一つの手続きで迅速に行えるようになりました(新たな非訟手続)。

  1. コンテンツプロバイダ(SNS等)への請求: 投稿に使われたIPアドレス等の開示を求めます。
  2. アクセスプロバイダ(携帯会社・ISP)への請求: IPアドレスを元に、投稿者が契約しているプロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、OCNなど)を特定し、契約者情報の開示を求めます。
  3. 投稿者の特定完了

特定後のアクション

投稿者の氏名・住所が判明したら、以下の法的措置をとります。

  • 損害賠償請求(慰謝料): 民事訴訟または示談交渉で、精神的苦痛に対する慰謝料や調査費用(弁護士費用)を請求します。
  • 刑事告訴: 内容が悪質な場合、名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪などで警察に告訴状を提出し、処罰を求めます。

5. 弁護士に依頼するメリットと「時間制限」

ネット誹謗中傷対応は、まさに**「時間との戦い」です。 プロバイダが持っているアクセスログ(通信記録)の保存期間は、一般的に「3ヶ月〜6ヶ月」**と非常に短いです。 この期間を過ぎるとログが消え、犯人の特定が物理的に不可能になります。

  • 迅速な手続き: 弁護士はログ保存期間を考慮し、最短ルートで仮処分や開示請求を行います。
  • 法的主張の構成: 単に「ひどいことを書かれた」では通りません。「どの法律の、どの権利を侵害しているか」を論理的に構成し、裁判官を説得します。

まとめ:放置せず、早めの相談を

「有名税だから仕方ない」「相手にするだけ無駄」と放置していると、検索エンジンの上位にネガティブな記事が表示され続け、採用難や売上減少といった実害が拡大します。

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