「取引先からの入金が遅れている」 「請求書を送っても無視されている」 「何度も督促しているのに、のらりくらりと躱されている」
債権回収において最も重要なのは**「スピード」**です。時間が経てば経つほど相手の資金は枯渇し、あるいは財産を隠され、回収率は下がっていきます。また、債権には「消滅時効」があり、放置すると権利そのものが消えてしまいます。
本記事では、任意の交渉から法的手続き、最終的な強制執行に至るまでの「債権回収の全ステップ」を弁護士が解説します。
ステップ1:任意の交渉(裁判所を通さない回収)
いきなり訴訟を起こすのではなく、まずはコストと時間の掛からない方法から着手します。
① 電話・メール・訪問による催告
まずは担当者に連絡し、単なるミスなのか、資金難なのか、支払う意思がないのかを確認します。
- ポイント: 「いつまでに支払うか」という明確な期限を区切って約束させ、記録に残します。
② 内容証明郵便の送付(弁護士名での送付)
電話や通常の書面で反応がない場合、**「内容証明郵便」**を送付します。 これは、「いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったか」を郵便局が証明してくれるものです。
- 証拠としての価値: 裁判になった際の有力な証拠となります。
- 時効の完成猶予: 6ヶ月間、時効の完成を遅らせることができます(催告)。
- 心理的プレッシャー: 弁護士名で「法的措置を講じる」旨の通知が届くことで、相手が事の重大さを認識し、支払いに応じるケースは非常に多いです。
ステップ2:保全処分(資産隠しの防止)
相手に支払う意思がない、あるいは倒産の危機がある場合、裁判をしている間に財産を隠されたり、使い込まれたりするリスクがあります。 これを防ぐために行うのが**「仮差押え(かりさしおさえ)」**です。
- 効果: 判決が出る前に、相手の銀行口座や不動産を一時的に凍結(ロック)し、勝手に処分できないようにします。
- メリット: 口座が凍結されると相手は事業継続が困難になるため、慌てて任意支払いに応じてくることがあります。
ステップ3:法的措置(裁判所を通じた手続き)
内容証明郵便を送っても支払われない場合、裁判所の手続きを利用して**「債務名義(さいむめいぎ)」**の取得を目指します。債務名義とは、「強制執行をしてもよい」という公的なお墨付きです。
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① 支払督促(しはらいとくそく)
書類審査のみで行われる簡易な手続きです。
- メリット: 手数料が安く、スピーディー。
- デメリット: 相手が「異議」を申し立てると、通常の訴訟に移行してしまいます。相手が争ってこないことが予想される場合に有効です。
② 民事調停(みんじちょうてい)
裁判官と調停委員を交えて話し合いを行います。
- メリット: 柔軟な解決(分割払いなど)が可能。
- デメリット: 相手が出席しなかったり、合意できなければ不成立となり、時間の無駄になる可能性があります。
③ 訴訟(少額訴訟・通常訴訟)
話し合いで解決しない場合、最終的には裁判を起こします。
- 少額訴訟: 60万円以下の金銭支払いを求める場合、原則1回の期日で判決が出ます。
- 通常訴訟: 証拠に基づいて徹底的に争います。勝訴判決を得ることで、強力な債務名義となります。
ステップ4:強制執行(財産の差押え)
「裁判で勝った=お金が手に入る」わけではありません。判決が出ても相手が支払わない場合、**「強制執行」**を行い、無理やり回収します。
狙うべき主な財産
- 預金口座: 最も確実性が高い方法です。相手の取引銀行・支店を特定する必要があります。
- 売掛金債権: 相手が取引先に対して持っている請求権を差し押さえます。相手の取引先に通知が行くため、相手企業の社会的信用に影響を与えます(そのため、その前に支払ってくる効果も期待できます)。
- 給与(個人の場合): 給与の一部を毎月天引きして回収します。
- 不動産・動産: 手続きが複雑で費用もかさむため、上記で回収できない場合の手段となります。
弁護士に依頼するメリット
債権回収は、自社で行うことも可能ですが、以下の点で弁護士に依頼するメリットは大きいです。
- 「本気度」が伝わる: 弁護士が出てくることで、相手は「逃げ得は許されない」と悟り、優先的に支払いを行うようになります。
- 法的な「武器」の選択: 状況に応じて、支払督促が良いのか、仮差押えをすべきか、最適な手段を判断します。
- 財産調査のサポート: 弁護士会照会などを利用し、相手の財産調査を行える場合があります。
まとめ:諦める前にご相談ください
「少額だから弁護士費用の方が高くつくかも」 「相手にも事情があるから強く言いにくい」
そう迷っている間にも、回収の可能性は刻一刻と下がっています。 当事務所では、回収見込みの診断や、費用対効果を考慮したプランの提案を行っています。 泣き寝入りする前に、まずは一度、専門家の意見を聞いてみてください。

