「その契約書、そのままハンコを押さないで!」取引先から提示された契約書の修正・交渉ポイントを弁護士が解説

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弁護士町田北斗

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はじめに

取引先から「契約書案を作ったので、確認して押印してください」とファイルを渡されたとき、あなたはどうしていますか?

「相手は大手だし、文句を言ったら契約がなくなるかも…」 「法律用語が難しくてよく分からないから、とりあえずサインしよう」

もしそう考えているなら、少し立ち止まってください。 相手が提示してくる契約書は、当然ながら**「相手にとって有利(あなたにとって不利)」**に作られています。

そのまま締結することは、将来のトラブルの種を自ら撒くようなものです。 この記事では、取引先との関係を壊さずに契約書を修正してもらうための「交渉のコツ」と、最低限チェックすべき「危険な条項」について解説します。


1. 契約交渉は「ワガママ」ではない!まずはマインドセットを変えよう

多くの人が誤解していますが、契約書の修正を求めることは、相手への敵対行為ではありません。むしろ、**「自社の権利と責任の範囲を明確にする、プロフェッショナルな行為」**として受け取られます。

  • リスク管理能力のアピール: 内容をしっかり確認している姿勢は、ビジネスパートナーとしての信頼感を高めます。
  • 「修正ゼロ」はあり得ない: 相手も「修正が入ること」を前提に、少し高めのボール(有利な条件)を投げていることがほとんどです。

恐れずに、「この部分は弊社にはリスクが大きすぎるため、調整させてください」と切り出しましょう。


2. 波風を立てずに修正を通す!交渉のテクニック

いきなり「この条項は削除してください!」と強く出ると、角が立ちます。スムーズに修正を受け入れてもらうための実務的なテクニックをご紹介します。

① 「修正履歴」を残して具体案を出す

口頭で「ここを変えて」と言うのではなく、Wordファイルの「変更履歴の記録」機能を使い、**具体的な代案(修正案)**を提示しましょう。相手の手間を減らすことが、承認への近道です。

② 「理由」をセットで伝える

単なる拒否ではなく、「なぜ修正が必要か」という理由を添えます。

  • ×ダメな例: 「第5条は受け入れられません。」
  • ○良い例: 「第5条の損害賠償額が無制限となっていますが、弊社の事業規模では負担しきれないリスクがあるため、『契約金額を上限とする』という形に修正させていただけないでしょうか?」

「公平性」や「現実的な運用」を理由にすると、相手も断りにくくなります。


3. ここだけは見逃すな!修正必須の「4つのポイント」

契約書全体を完璧に理解するのは難しくても、以下の4点は必ずチェックし、不利であれば修正を求めてください。

① 【業務範囲】「など」や「付随する業務」に注意!

「本件業務および、これに関連する一切の業務」といった曖昧な表現が含まれていませんか? これを放置すると、契約外の修正作業や追加タスクを**「無料で」**やらされる原因になります。

  • 交渉ポイント: 仕様書や見積書を引用し、「業務の範囲は別紙見積書の通りとする」と限定しましょう。

② 【損害賠償】「上限」と「範囲」を設ける

最も怖い条項です。「一切の損害を賠償する」と書かれている場合、軽微なミスで莫大な賠償金を請求される恐れがあります。

  • 交渉ポイント:
    1. 上限規定: 「本契約に基づき支払われた報酬総額を上限とする」という一文を入れる。
    2. 過失の限定: 「故意または重大な過失がある場合に限り」とする。

③ 【知的財産権】「著作者人格権」まで放棄していないか?

クリエイティブな業務(デザイン、プログラム、執筆など)の場合、「成果物の著作権は発注者に帰属する」とされるのが一般的です。 しかし、「著作者人格権を行使しない」という条項があると、勝手に作品を改変されても文句が言えなくなります。

  • 交渉ポイント: 著作権の譲渡はやむを得ないとしても、「ポートフォリオ(実績)としての公開は認める」といった条項を追加してもらいましょう。

④ 【契約解除】「一方的な解除」になっていないか?

「甲(発注者)は、いつでも本契約を解除できる」といった条項がある場合、プロジェクトの途中で突然切られ、報酬がもらえないリスクがあります。

  • 交渉ポイント: 「中途解約の場合は、既に行われた業務の割合に応じて報酬を支払う」という規定を必ず入れてください。

4. 弁護士に依頼するメリットとは?

「自分で交渉するのは精神的に重い…」 「この修正案で法的に穴がないか不安だ」

そんな時は、弁護士による**「リーガルチェック(契約書レビュー)」**をご利用ください。

弁護士に依頼するメリットは、単に条文を直すだけではありません。

  • 「第三者の意見」として交渉できる: 「顧問弁護士から指摘を受けたので…」と言えば、角を立てずに修正を求めやすくなります。
  • 見えないリスクの発見: 契約書に「書かれていないこと(欠落している条項)」によるリスクは、専門家でないと気づけません。

まとめ

提示された契約書を修正することは、あなたの会社と未来を守るための正当な権利です。

  1. 遠慮せず交渉するマインドを持つ。
  2. 「理由」と「代案」をセットで提示する。
  3. 損害賠償の上限など、致命的な条項は必ず修正する。

もし、「この契約書、サインして大丈夫かな?」と迷ったら、ハンコを押す前に一度ご相談ください。数万円のチェック費用を惜しんだために、後に数百万円の損害を被るケースは後を絶ちません。 あなたのビジネスを対等で健全なものにするために、私たちがサポートします。

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