はじめに
「契約書は紙で作成し、実印を押して、印鑑証明書を添付する」 これまで当たり前だったこの常識が、今大きく変わろうとしています。
取引先から「今回の契約はクラウドサイン(電子契約)でお願いします」と言われ、戸惑ったことはありませんか? 「メールで届いたURLをクリックするだけで、本当に法的な効力があるの?」 「裁判になった時、証拠として弱くないの?」
結論から申し上げますと、電子契約は紙の契約書と同等の法的効力を持ちます。 それどころか、コスト削減や業務効率化において、中小企業こそ導入すべき大きなメリットがあります。 今回は、電子契約の仕組みと安全性、そして導入の利点について弁護士が解説します。
1. そもそも電子契約は「合法的」なのか?
「ハンコがないと契約は無効」というのは誤解です。 日本の法律では、契約は当事者の「申込み」と「承諾」の意思表示があれば成立します(口頭でも成立します)。
しかし、言った言わないのトラブルを防ぐために「契約書」を作ります。ここで重要になるのが**「電子署名法」**という法律です。
電子署名法による「お墨付き」
法律上、以下の条件を満たす電子署名は、手書きの署名や押印と同じ効力(真正な成立)を持つと認められています。
- 本人性の確認: 本人が作成したものであること(他人のなりすましではないこと)
- 非改ざん性: 作成後に内容が改変されていないこと
現在普及している主要な電子契約サービス(クラウドサイン、DocuSign、GMOサインなど)は、**「電子署名」と「タイムスタンプ」**という技術を組み合わせることで、この2つの条件を厳格にクリアしています。
【弁護士のポイント】 2020年に政府(法務省・総務省・経産省)が、「クラウド型(立会人型)の電子署名も法的に有効である」という見解を正式に出しています。これにより、実務上の法的リスクは極めて低くなりました。
2. 経営者が喜ぶ!電子契約導入の3つのメリット
法的に問題がないだけでなく、電子契約には経営上の明確なメリットがあります。
メリット① 収入印紙代が「0円」になる
これが最大のメリットです。 紙の契約書にかかる「印紙税」は、あくまで「紙の文書」に対する課税です。データである電子契約には、金額がいくら大きくても印紙税はかかりません。 (例:建設工事請負契約や金銭消費貸借契約など、毎回印紙を貼っていたコストが全額浮きます)
メリット② 契約締結までのスピードが劇的アップ
「製本して、押印して、郵送して、相手の返送を待つ…」 これまで1〜2週間かかっていた作業が、**最短「数分」**で完了します。ビジネスのスピードを止めず、チャンスを逃しません。
メリット③ 管理・検索が簡単になる
「あの契約書、どこにしまったっけ?」とキャビネットを探す必要はありません。 「会社名」や「契約日」で瞬時に検索・閲覧が可能です。更新期限のアラート機能などを使えば、更新漏れのリスクも防げます。
3. ここだけは注意!導入時のリスクと対策
非常に便利な電子契約ですが、導入にあたっていくつか注意すべき点があります。
① 相手方の同意が必要
電子契約は、自分だけで勝手に始めることはできません。取引先に「電子契約で締結したい」と伝え、承諾を得る必要があります。 最近は抵抗感が薄れていますが、古い慣習を重んじる企業や、社内規定で「紙必須」となっている企業も存在します。
② 「なりすまし」のリスク管理
「メールのリンクをクリックするだけで契約完了」という手軽さは、裏を返せば**「そのメールアドレスを使える権限がある人なら、誰でも契約できてしまう」**というリスクでもあります。 (例:担当者が勝手に社長決裁が必要な契約を結んでしまう等)
【対策】
- 権限規定の見直し: 誰が電子契約の承認ボタンを押してよいか、社内ルール(職務権限規程)を明確にする。
- アクセス制限: 契約締結用のアカウントには、二要素認証を設定し、決裁権者しかログインできないようにする。
③ 電子化できない契約も(ごく一部)ある
法改正によりほとんどの契約が電子化可能になりましたが、「事業用借地権設定契約」や「任意後見契約」など、公正証書で作らなければならない契約等は、現在でも完全な電子化が難しいケースがあります。
まとめ
電子契約は、もはや「簡易的な代替手段」ではなく、**「ビジネスの標準」**になりつつあります。
- 法的な効力は紙と同等。
- 印紙代の削減とスピードアップ効果は絶大。
- ただし、社内の権限管理(ガバナンス)はしっかり行う必要がある。
「これから導入したいが、社内ルールをどう変えればいいか」「取引先に送る契約書の条文を、電子契約用に修正したい」といったご相談も当事務所では承っております。 法的な足場を固めた上で、快適なペーパーレス化を進めましょう。

