「ネットで見つけた画像を社内ブログに使った」
「新商品のネーミング、実は他社が商標登録していた」
これらは、企業法務の現場で頻繁に相談される「知的財産権」のトラブル事例です。
知的財産権(知財)の侵害は、損害賠償請求だけでなく、商品の回収・廃棄、社名変更、さらには社会的信用の失墜(炎上)に直結する重大な経営リスクです。
本記事では、特にトラブルになりやすい**「著作権」と「商標権」**について、侵害しない・されないためのポイントを弁護士が解説します。
1. 著作権と商標権の「決定的な違い」
まず、この2つの違いを正しく理解することが対策の第一歩です。
| 項目 | 著作権 (Copyright) | 商標権 (Trademark) |
| 保護対象 | 文芸、音楽、絵画、プログラムなどの**「表現」** | 商品やサービスに使われる**「マーク・ネーミング」** |
| 発生時期 | 作った瞬間に自動的に発生(登録不要) | 特許庁に出願し、登録されて初めて発生 |
| 主な目的 | 文化の発展、創作者の保護 | 業務上の信用維持、ブランド保護 |
ポイント: 著作権は「作った人」に自然に発生しますが、商標権は「早い者勝ち(先願主義)」で登録した人が権利を持ちます。
2. 【著作権】侵害しない・されないための注意点
著作権トラブルの多くは、Web上のコンテンツ利用や外注制作で発生します。
「侵害しない」ためのポイント
- 「フリー素材」の落とし穴に注意「無料(フリー)」=「著作権フリー(権利放棄)」ではありません。
- 商用利用はOKか?
- 加工・改変は許されているか?
- クレジット表記は必要か?これらはサイトの利用規約によって全く異なります。必ず規約を確認しましょう。
- 外注時の契約書(権利の所在)Webサイト制作やロゴデザインを外部のデザイナーに発注した場合、原則として**著作権は「作った側(デザイナー)」にあります。自社で自由に使い回したり、修正したりしたい場合は、契約書で「著作権を譲渡する」**旨を取り決めておく必要があります。
- 社内コンプライアンスの徹底従業員が「会社の公式SNS」で、漫画のコマや有名人の写真を勝手に投稿して炎上するケースが後を絶ちません。「私的利用」の範囲を超え、業務として行う以上は厳格な権利処理が必要です。
「侵害されない」ためのポイント
- 著作者の証明: 著作権には登録制度が(原則)ないため、「いつ自分が作ったか」の証拠(制作過程のデータ保存、公表日の記録など)を残しておくことが防御になります。
3. 【商標権】侵害しない・されないための注意点
商標権は、ビジネスの「看板」を守る権利です。知らずに使っていると、ある日突然、差し止め請求が届くリスクがあります。
「侵害しない」ためのポイント
- ネーミング決定前の「商標調査」は必須新しいサービス名や商品名を決める際、**特許庁のデータベース(J-PlatPat)**で、似たような名前が既に登録されていないか必ず検索してください。
- 注意: 全く同じ名前だけでなく、「発音(読み方)」が似ている場合も侵害となる可能性があります。
- 区分(ジャンル)の確認商標は「第○類」という商品・サービスのジャンルごとに登録されます。他社と同じ名前でも、全く異なるジャンルであれば使える場合がありますが、判断は専門的です。
「侵害されない(自社ブランドを守る)」ためのポイント
- 早期の出願・登録商標は**「早い者勝ち」です。長く使っている名前でも、他社に先に登録されてしまうと、その名前を使えなくなる(あるいはライセンス料を請求される)恐れがあります。ビジネスが軌道に乗ってからではなく、「名前を決めた段階」**での出願が鉄則です。
- 模倣品への対抗商標登録しておけば、AmazonなどのECサイトで模倣品が出回った際、プラットフォーム側に「商標権侵害」として出品削除を依頼しやすくなります。
4. もし警告書が届いたら?(初動対応)
他社から「権利侵害だ」という警告書(内容証明郵便など)が届いた場合、慌てて相手の言いなりになってはいけませんが、無視も厳禁です。
- 回答期限の確認: まずは落ち着いて内容を確認します。
- 権利の有効性確認: 相手の商標権は本当に有効か? 自分の使い方は本当に侵害に当たるのか?(「商標としての使用ではない」等の反論余地がないか)
- 弁護士へ相談: 返答内容を間違えると、その後の裁判等で不利になります。自分で返事をする前に、必ず専門家にご相談ください。
まとめ:知財戦略は「予防」が最大の防御
知的財産権の侵害リスクは、事前の調査と契約書の整備で大部分を防ぐことができます。
「これくらい大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。
- 新商品のネーミング調査・商標出願
- Webサイトやチラシの著作権チェック
- デザイナーやライターとの業務委託契約書作成

