「Googleマップに事実無根の口コミを書かれた」
「匿名掲示板で実名を晒され、あることないこと書かれている」
「SNSでの炎上で、会社の採用活動や売上に影響が出ている」
インターネット上の誹謗中傷や風評被害は、放置すれば拡散され続け、企業のブランド毀損や個人の社会的評価の低下を招きます(デジタルタトゥー)。 しかし、これらは決して「泣き寝入り」すべき問題ではありません。法的な手続きを踏むことで、記事の削除や加害者の特定が可能です。

弁護士費用が20~30万円以上かかることが多いため、資金に余裕がない方は、泣き寝入りすることになります。
しかし、本ページでは、泣き寝入りせずに、ご自身で出来るように分かり易く紹介したいと思います。
本記事では、ネット誹謗中傷に直面した際の実務的な対抗策と法的フローについて解説します。
1. 誹謗中傷が「違法」となるライン
書き込みの内容が「気に入らない」というだけでは、削除や損害賠償請求はできません。法的に権利侵害と認められる必要があります。主な侵害類型は以下の通りです。
① 名誉毀損(めいよきそん)
「公然と」「事実を摘示し」「人の社会的評価を低下させる」行為です。
- 例: 「A社は残業代を払っていないブラック企業だ」「B氏は不倫をしている」など、具体的な事柄を挙げて批判する場合。
- ※注意: たとえ真実であっても、公益性がなければ名誉毀損になり得ます。
② 侮辱(ぶじょく)
事実を摘示せず、相手の人格を否定する罵詈雑言を浴びせる行為です。
- 例: 「バカ」「無能」「詐欺師」といった抽象的な悪口。
③ 信用毀損・業務妨害
虚偽の情報を流し、経済的な信用を落としたり、業務を妨害したりする行為です。
- 例: 「あの店の料理に異物が入っていた(嘘)」などの書き込み。
④ プライバシー侵害・肖像権侵害
住所、電話番号、私生活の写真を無断で公開する行為です。
2. 被害に遭った時の初動対応:証拠保全
最初に行うべきは**「証拠の保存」**です。 相手が投稿を削除したり、アカウントを消したりすると、追跡が困難になります。
【有効な証拠の残し方】 スマホやPCのスクリーンショットを撮ります。その際、必ず以下の情報が含まれていることを確認してください。(スマホで画面を撮影する方法でも問題ありません。)
※URLが切れていると証拠として弱くなるため、PDF保存機能なども併用することをお勧めします。(PCの場合、該当ページを右クリックして、「印刷」→送信先をPDFにする)
3. ステップ①:記事・投稿の「削除」
ネガティブな情報をインターネット上から消すための手続きです。
サイト運営者への削除依頼
各サイト(Google、X、掲示板管理者など)には「削除申請フォーム」や「違反報告機能」があります。 しかし、任意の削除依頼は「表現の自由」を理由に応じてもらえないケースも多々あります。
裁判所を通じた「削除を求める仮処分(かりしょぶん)」
サイト側が削除に応じない場合、裁判所に**「削除仮処分命令」**を申し立てます。 通常の裁判(訴訟)よりも迅速に決定が出る手続きで、裁判所から削除命令が出れば、ほとんどのサイト管理者は削除に応じます。
. 削除仮処分命令とは何か?
削除仮処分命令とは、裁判所を通じて、ウェブサイトの管理者やプロバイダに対し、「記事や投稿を仮に削除しなさい」と命じてもらう手続きのことです(民事保全法に基づく手続き)。
なぜ「仮」なのか?
通常の裁判(本訴)で「違法だから削除せよ」という確定判決を得るには、半年から1年以上の時間がかかることが珍しくありません。しかし、ネット上の情報は瞬く間に拡散するため、判決を待っていては被害者の社会的信用やプライバシーが守れない場合があります。
そこで、本裁判の結論が出る前に、**「とりあえず急いで削除する状態を作り出す」**ために行われるのがこの手続きです。
ポイント 「仮」という名称ですが、実務上は、裁判所から削除命令が出れば、ほとんどのサイト管理者は削除に応じます。したがって、仮処分が認められれば、実質的な解決(削除)に至るケースが大半です。
2. 削除仮処分が認められるための2つの要件
裁判所に削除仮処分命令を出してもらうためには、法律上、以下の2つの要件を疎明(証明)する必要があります。
① 被保全権利(守るべき権利があること)
「その投稿によって、私の権利が侵害されている」という事実です。 具体的には以下のような権利侵害が主張されます。
- 名誉毀損(名誉権侵害): 公然と事実を摘示し、社会的評価を低下させる場合
- プライバシー侵害: 私生活上の事実を勝手に公開された場合
- 肖像権侵害: 顔写真などを無断で掲載された場合
② 保全の必要性(急ぐ理由があること)
「今すぐ削除しなければ、回復困難な損害が生じる」という事情です。 インターネット上の情報はコピーや拡散が容易であるため、基本的には「ネット上に掲載されている」という事実をもって、保全の必要性が認められる傾向にあります。
3. 手続きの流れと期間
通常の裁判よりも迅速に進むのが特徴です。スムーズに進めば、申立てから1ヶ月〜2ヶ月程度で削除が実現します。
Step 1:仮処分の申立て
債権者(被害者)が、債務者(サイト管理者・プロバイダ)を相手取り、裁判所に申立書と証拠を提出します。
Step 2:審尋(しんじん)
裁判官と、双方の当事者(または代理人弁護士)が面談を行う手続きです。通常の法廷ではなく、ラウンドテーブルのような部屋で行われることが一般的です。
- 双方審尋: 相手方の言い分も聞く手続き(原則)。
- ここで、「権利侵害があるか」「削除すべきか」の法的な議論が行われます。
Step 3:担保金の納付(供託)
裁判官が「削除を認める(心証形成)」となった場合、命令発令の条件として**「担保金」**の納付を求められます。
- これは、万が一後で「削除は間違いだった(違法ではなかった)」と判明した場合に、相手方に生じる損害を賠償するための保証金です。
- 相場: 30万円〜50万円程度が一般的です。
- ※このお金は、手続き終了後に所定の手続きを踏めば返還されます。
Step 4:削除仮処分命令の発令
担保金の入金が確認されると、裁判所から正式に命令が出されます。
Step 5:削除の実行
決定正本を相手方に送達すると、相手方が削除を実行します。 (従わない場合は「間接強制」という手続きに進みますが、多くの事業者は命令に従います)
【削除仮処分命令のメリット・デメリット】
| メリット | デメリット |
| 〇スピードが早い 通常の裁判より圧倒的に早く、拡散を食い止めることができます。 | ×担保金が必要 一時的とはいえ、数十万円単位のまとまった現金を用意する必要があります。 |
| 〇実効性が高い 裁判所の命令であるため、海外サーバーの管理者なども従うケースが多いです。 | ×高度な法的知識が必要 短期間で裁判官を説得する必要があるため、主張や証拠の整理に高い専門性が求められます。 |
4. ステップ②:投稿者の「特定」と「責任追及」
「削除するだけでは気が済まない」「損害賠償を請求したい」「二度とやらないと誓約させたい」という場合は、匿名投稿者を特定する必要があります。
これを**「発信者情報開示請求」**といいます。
特定までの流れ(改正プロバイダ責任制限法)
かつては2回の裁判が必要でしたが、2022年の法改正により、一つの手続きで迅速に行えるようになりました(新たな非訟手続)。
- コンテンツプロバイダ(SNS等)への請求: 投稿に使われたIPアドレス等の開示を求めます。
- アクセスプロバイダ(携帯会社・ISP)への請求: IPアドレスを元に、投稿者が契約しているプロバイダ(ドコモ、ソフトバンク、OCNなど)を特定し、契約者情報の開示を求めます。
- 投稿者の特定完了
特定後のアクション
投稿者の氏名・住所が判明したら、以下の法的措置をとります。
- 損害賠償請求(慰謝料): 民事訴訟または示談交渉で、精神的苦痛に対する慰謝料や調査費用(弁護士費用)を請求します。
- 刑事告訴: 内容が悪質な場合、名誉毀損罪や侮辱罪、業務妨害罪などで警察に告訴状を提出し、処罰を求めます。
5. 弁護士に依頼するメリットと「時間制限」
ネット誹謗中傷対応は、まさに**「時間との戦い」です。 プロバイダが持っているアクセスログ(通信記録)の保存期間は、一般的に「3ヶ月〜6ヶ月」**と非常に短いです。 この期間を過ぎるとログが消え、犯人の特定が物理的に不可能になります。
- 迅速な手続き: 弁護士はログ保存期間を考慮し、最短ルートで仮処分や開示請求を行います。
- 法的主張の構成: 単に「ひどいことを書かれた」では通りません。「どの法律の、どの権利を侵害しているか」を論理的に構成し、裁判官を説得します。
まとめ:放置せず、早めの相談を
「有名税だから仕方ない」「相手にするだけ無駄」と放置していると、検索エンジンの上位にネガティブな記事が表示され続け、採用難や売上減少といった実害が拡大します。

