デジタル資産の相続対策は、現代において非常に重要性が高まっています。従来の資産と異なり、**「存在を証明すること」と「アクセスすること」**が難しいため、特にトラブルや財産の散逸(消失)が起こりやすい領域です。
弁護士が、トラブルを回避するための3つの柱に分けて、具体的かつ実践的な対策をご提案します。
💻 デジタル資産の相続トラブルを回避するための3つの柱
柱1:【今すぐできる】アクセス権の確保と情報の一元化
デジタル資産は、ログイン情報が分からなければ存在しないのと同じです。ご家族が認知症や急な事態に備え、アクセス権を確保するための具体的な手段です。
1. 「デジタル資産専用パスワードリスト」の作成
- 記録すべき情報:
- ログインIDとパスワード: ネット銀行、証券口座、仮想通貨取引所など。
- 二段階認証(2FA)のバックアップコード: これがないと、パスワードがあってもログインできません。
- デバイスのPINコード: スマートフォン、PC、タブレットのロック解除パスワード。
- サブスクリプションサービス: 毎月の支払いが発生する動画配信や音楽サービスの一覧。
- 管理と保管方法:
- 最も安全な方法: 記録したリストを公正証書遺言や任意後見契約書の付随資料として添付し、弁護士や公証役場に保管してもらう。
- 家族での共有: 信頼できる家族一人のみが紙で保管するか、暗号化されたパスワード管理ツール(例:1Password)で共有する。
2. 各種プラットフォームの「死後設定」
主要なデジタルサービスには、アカウント保有者が亡くなった後の対応を設定できる機能があります。
| サービス | 機能名 | 対応 |
| 「非アクティブアカウント管理ツール」 | アカウントが一定期間使われなかった場合に、データを削除するか、指定の人物に通知・共有するかを設定する。 | |
| Apple | 「デジタル遺産プログラム(故人アカウント管理連絡先)」 | データを引き継ぐ人を指定し、死亡証明書などの提出でアクセスできる設定を行う。 |
柱2:【法的対策】「デジタル遺言執行者」の指名
単なるリスト作成だけでは、銀行のような金融機関は対応してくれません。デジタル資産のアクセスと処理を法的に確実にするため、遺言書に明確に記載することが必要です。
- 遺言書での明確な指示:
- **「資産執行者」**を指名し、その範囲を明確に定めます。(例:長男〇〇を遺産執行者とし、仮想通貨口座の解約と送金を執行させる)。
- 資産の配分: 仮想通貨やデジタルコンテンツ(NFTなど)を誰に、どのように相続させるかを具体的に記載する。
- 弁護士の役割:
- 遺言書に「遺言執行者」の権限を、サービス側の利用規約や日本の法律に照らして法的に有効となるよう設計・記載します。
- 特に仮想通貨のように価値変動が激しい資産については、解約・現金化のタイミングや方法についても助言します。
柱3:【特殊資産】仮想通貨・NFTへの対応
| 資産の種類 | トラブル回避のための最重要対策 |
| 仮想通貨 | シークレットリカバリーフレーズ(秘密鍵)を、**物理的に安全な場所(貸金庫など)に、弁護士や信頼できる家族に「存在」**だけを伝えて保管する。取引所のログイン情報だけでは、凍結・没収のリスクがあります。 |
| NFT/メタバース | 資産性があるものについては、譲渡の可否や方法を遺言書に明記し、専門的な知見を持つ弁護士に相談する。 |
これらの対策を家族で進めることで、予期せぬトラブルや財産の消失を防ぐことができます。
デジタル資産の対策を具体的に進めるために、公正証書遺言または家族信託のどちらを軸にコンテンツを強化すべきか、ご検討の参考になれば幸いです。

