【完全ガイド版】相続のすべてを徹底解説|手続きの流れからトラブル回避法まで

「親が亡くなり、何から手を付ければいいかわからない」
「兄弟間で遺産の話がまとまらない」
「借金も相続しなければならないのか不安だ」
相続は、人生でそう何度も経験するものではありません。大切なご家族を亡くされた悲しみの中で、膨大かつ複雑な手続き期限に追われることは、精神的にも肉体的にも大きな負担となります。
本記事では、相続が発生した直後から完了までの全体の流れ、絶対に守るべき期限、よくあるトラブルと解決策について、弁護士が体系的に解説します。
この記事を読めば、相続の全体像が把握でき、相続人として今ご自身が「何をすべきか」が明確になるはずです。

相続の最終的な目的は、遺産分割協議を成立させて資産の分配&不動産登記を行うことにあります。

1. 相続とは? 基本の「き」を知る
相続とは、亡くなった方(被相続人)の財産上の権利義務を、配偶者や子などの親族(相続人)が引き継ぐことを指します。
ここで重要なのは、引き継ぐ財産には「プラスの財産」だけでなく「マイナスの財産」も含まれるという点です。
相続財産の対象を把握する
プラスの財産: 現金、預貯金、不動産(土地・建物)、株式、自動車、貴金属など
マイナスの財産(負債): 借金、ローン、未払いの税金・家賃、連帯保証債務など
「借金があることを知らずに相続してしまった」という事態を避けるためにも、まずは財産の全容を把握することがスタートラインとなります。
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2. 相続手続きのタイムリミットと流れ
相続手続きには、法律で定められた厳格な「期限」があります。期限を過ぎると、本来受けられたはずの特例が使えなくなったり、借金を背負うことになったりするリスクがあります。
まずは全体のスケジュールを確認しましょう。非常にタイトなスケジュールになるため、期限を経過しないよう注意が必要です。
【期限経過のデメリットまとめ】
- 「相続放棄」ができなくなる
- 税金の減額特例が使えず、相続税が数百万円単位で負担増
- 延滞税・加算税」などのペナルティの賦課
- 次の相続(数次相続)が発生し、遺産分割が複雑化
- 不動産登記の義務違反で過料対象(10万円以下)
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7日以内:死亡届の提出
市区町村役場へ死亡届を提出します。これと同時に、葬儀の手配なども進めることになります。
| 手続き名称 | 期限 | 提出先 | 備考 |
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内 | 死亡地・本籍地・届出人の住所地の市区町村役場 | 葬儀社が代行する場合が多いですが、署名・押印は親族が行います。 |
| 火葬(埋葬)許可申請 | 死亡届と同時 | 市区町村役場 | これがないと火葬ができません。死亡届とセットで提出します。 |
| 年金受給権者死亡届 | 国民年金:14日以内 厚生年金:10日以内 | 年金事務所 または 年金相談センター | マイナンバー収録済みの場合は省略できることがあります。 |
| 介護保険資格喪失届 | 死後14日以内 | 市区町村役場 | 介護保険被保険者証を返却します。 |
| 国民健康保険 資格喪失届 | 死後14日以内 | 市区町村役場 | 保険証を返却します。世帯主変更が必要な場合もこの時に行います。 |
| 世帯主変更届 | 死後14日以内 | 市区町村役場 | 亡くなった方が世帯主で、残された家族が2人以上いる場合に必要です。 |
| 公共料金等の解約・名義変更 | 速やかに | 各電力・ガス・水道会社、電話会社など | 銀行口座が凍結されると引き落としができなくなるため、早めの対応が推奨されます。 |
3ヶ月以内:相続放棄・限定承認の申述【重要】
もし被相続人に多額の借金がある場合、家庭裁判所に「相続放棄」を申し立てることで、借金の返済義務を免れることができます。
期間が非常に短いため、財産調査は速やかに行う必要があります。
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4ヶ月以内:準確定申告
故人に所得があった場合、相続人が代わりに確定申告(準確定申告)を行う必要があります。
| 準確定申告の項目 | 内容 | 備考 |
| 手続き名称 | 準確定申告 | 亡くなった方の1月1日から死亡日までの所得を申告します。 |
| 期限 | 相続の開始を知った日の翌日から 4ヶ月以内 | 通常の確定申告(翌年2/16〜3/15)とは期限が異なります。 |
| 提出先 | 亡くなった方の住所地を 管轄する税務署 | 相続人の住所地ではないため注意が必要です。 |
| 申告・納税義務者 | 相続人全員 | 原則として、相続人全員の連署により提出します。 |
| 必要なケース | ・自営業やフリーランスの方 ・不動産収入(家賃など)があった方 ・年金収入が400万円超の方 ・給与所得が2,000万円超の方 など | 医療費控除を受けて還付金を受け取りたい場合も行います。 |
10ヶ月以内:相続税の申告・納税【重要】
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告と納税が必要です。
遺産の総額が「基礎控除額」を超える場合にのみ必要となりますが、期限が厳格に定められていて、 1日でも遅れると延滞税などのペナルティが発生するため、早めの準備が不可欠です。
| 項目 | 内容 | 備考 |
| 手続き名称 | 相続税の申告・納税 | 遺産を取得した人が、受け取った財産に応じて税金を申告・納税します。 |
| 期限 | 相続の開始を知った日の翌日から 10ヶ月以内 | この日までに「申告」だけでなく「納税」も済ませる必要があります。 |
| 提出先 | 亡くなった方の住所地を 管轄する税務署 | 準確定申告と同様、相続人の住所地ではありません。 |
| 申告が必要な人 | 遺産総額が基礎控除額を超える場合 | 基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数) |
| 特例の適用 | 配偶者の税額軽減 小規模宅地等の特例 | これらを使って税額が0円になる場合でも、申告書の提出自体は必要です。 |
1年以内:遺留分侵害額請求
遺言によって「愛人に全財産を譲る」など、特定の相続人の権利が侵害された場合、最低限の取り分(遺留分)を請求できる期限です。
3年以内:相続登記

| 手順(STEP) | 内容 | 目安期間 |
| STEP1:不動産の調査 | 「固定資産税 納税通知書」や「名寄帳」を使って、亡くなった方が所有していた不動産を漏れなく洗い出します。 | 数日 |
| STEP2:戸籍の収集 | 亡くなった方の「出生から死亡まで」の連続した戸籍を集め、誰が相続人になるかを法的に確定させます。 | 2週間 〜1ヶ月 |
| STEP3:遺産分割協議 | 相続人全員で「誰が不動産をもらうか」を話し合い、合意内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、実印を押します。 | 状況による |
| STEP4:登記申請 | 不動産の所在地を管轄する法務局へ申請書と必要書類を提出します。同時に「登録免許税(収入印紙)」を納めます。 | 即日 |
| STEP5:完了 | 書類に不備がなければ、申請から約1〜2週間で登記が完了。「登記識別情報通知(いわゆる権利証)」を受け取ります。 | 1〜2週間 |
3. 「誰が」「どれくらい」相続するのか?(相続人と相続分)
遺言書がない場合、誰が相続人になるかは民法で定められています(法定相続人)。
遺言書がある場合は、原則として遺言書に従い、分配されます。ただし、遺言書と異なる遺産分割協議を行うことは可能です。
法定相続人の優先順位
配偶者は常に相続人となります。それ以外の親族には順位があります。
- 第1順位(子): 配偶者と子(子が亡くなっている場合は孫が代襲相続)
- 第2順位(親): 子や孫がいない場合、親(直系尊属)
- 第3順位(兄弟姉妹): 子も親もいない場合、兄弟姉妹
法定相続分とは
民法が定める「遺産の取り分の目安」です。 ただし、これはあくまで目安であり、相続人全員の合意があれば、自由に分け方を決めることができます。
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | その他の人の割合 |
| 配偶者 + 子 | 1/2 | 子:1/2 |
| 配偶者 + 親(直系尊属) | 2/3 | 親:1/3 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 | 3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
| 子のみ (配偶者なし) | なし | 子:すべて(100%) |
| 親のみ (配偶者・子なし) | なし | 親:すべて(100%) |
| 兄弟姉妹のみ (配偶者・子・親なし) | なし | 兄弟姉妹:すべて(100%) |
4. 遺産分割協議:相続手続きの最後にして最難関のイベント
遺言書がない場合、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を話し合う必要があります。これを**「遺産分割協議」**といいます。
遺言書がある場合であっても、遺言書と異なる遺産分割を行うことは可能です。(全員の同意が必要)
分割協議の進め方

- 相続人の確定: 戸籍謄本等を収集し、誰が相続人かを法的に確定させます。
- 財産の調査: 預貯金の残高証明書の取得や不動産の評価を行います。
- 協議の実施: 全員で話し合います(対面でなくても、電話や手紙でも可)。
- 遺産分割協議書の作成: 合意内容を書面にまとめ、全員が実印を押印します。この書類が、不動産の名義変更や預金の解約に必要となります。
話がまとまらない場合
当事者同士での話し合いが難しい場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、調停委員を介して解決を目指すことになります。それでも決まらない場合は「審判」へと移行します。
5. よくある相続トラブルと予防策(遺言書)
「うちは家族の仲が良いから大丈夫」「財産なんて自宅くらいしかない」 そう思っているご家庭ほど、トラブル(争族)になりやすいのが現実です。
よくあるトラブル事例
- 不動産が分けられない: 実家(不動産)が主な財産で、現預金が少なく、物理的に分けられない。海外に資産がある。引き取り手がいない。
- 介護の寄与分: 「長男の嫁が親の介護をしていたが、遺産をもらえないのか」という不満。
- 使途不明金: 「同居していた次男が、親の預金を勝手に使い込んでいたのではないか」という疑念。
最大の予防策は「遺言書」
こうしたトラブルを防ぐ最も有効な手段は、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。
特に、公証人が作成する「公正証書遺言」は、法的な不備による無効となるリスクが低く、最も確実です。




















